所有者不明の土地の有効利用に向けた特別措置法(案)が5月24日の衆院本会議での可決に続き、6月6日の参院本会議で可決、成立したので、簡潔に整理しました。

この制度(新法)の主な内容は次の通りです。

1.所有者の分からない土地の利用を市町村、NPO、民間企業等が希望する場合、一定の公共性(公園、駐車場など公共利用目的)が認められれば、都道府県知事が最長10年間の利用を設定できる。

2.この間に土地所有者が出現し明け渡しを求めてきた場合、予め設定した利用権の期間終了後に、原状回復して返還する。

3.土地所有者からの異議がなければ、設定した利用権の期間延長も可能とする。

4.あわせて、国・自治体が公共事業を行うにあたり、所有者不明地の所有権を強制的に取得する収用手続きを簡素化する。

以上です。


所有権は、法令の制限内において、物を自由に使用・収益・処分することができる権利です。所有者にとって強力な権利です。所有権は財産権の典型といえます。憲法29条1項は財産権不可侵の原則を定める一方、同条2項及び3項で財産権の制限について定めています。したがって、新法は、理論上議論のあるところかと思います。

ちなみに、次のような数字があります。昨年、増田元総務相ら民間有識者でつくる「所有者不明土地問題研究会」では、2040年時点で所有者が分からない土地が全国で約720万ヘクタールに達する可能性があるとの推計を発表しました。また、このことが及ぼす経済損失は2017~2040年の累計で6兆円に上るとしています。大きな社会問題として捉えています。

ところで、そもそも所有者不明の土地が発生する要因はなんでしょうか。
素直に考えれば、大きく2つの要因があるでしょう。
1つは、日本の現行法の下では、土地所有権の登記を義務化していないこと。もう1つは、相続登記時に登録免許税が発生すること。
登記の義務化や促進により、全体の流れとして、所有者不明の土地を今後増やさないことに繋がると考えます。

いずれにしても、相続発生後、土地が放置され、そのうち所有者不明にならないよう早急な仕組み作りが必要な時が来たのではないでしょうか。


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